日本のアールヌーヴォー 東京国立近代美術館工芸館

9月17日〜

近美の工芸館は元近衛師団司令部庁舎で建物が重要文化財なのである。感じの良い建築だが展覧会を開くに当たっては色々制約もあろうと思う。しかしいつも良い企画です。今回も当たりだった。

・おなじみのアールヌーヴォーに影響を受けた出版物、ポスターなど(藤島デザイン「乱れ髪」の装幀とか)
鏑木清方「妖魚」
この作品、映丘の「伊香保の沼」と並んで私は大変好きだが、本人も周囲も清方らしくない絵だと感じていたらしい。岩の上に休む妖艶な人魚を描いた日本画である(福富コレクション)。福富太郎は死んでもこの絵は手放さないだろうな。

板谷波山のアールヌーヴォー調モティーフの陶器類
・藤井達吉の一連の作品(刺繍、文箱、ランプなど)
・杉浦非水「百花譜」ーこれは必見だった。
・高村豊周ーアールヌーヴォー風の作品も作っていることを知った。構成派風だけじゃなかったのですね。

植物文様はアールヌーヴォーの主要モティーフの一つだが、グラッセの方針であるところの実物写生を基礎としたデザインが、グラッセの教本を通じて日本にももたらされていたことが、京都工芸繊維大学他の蔵書展示により良く分かって興味深かった。やっぱりなというか。この教本は間違いなく和田英作の群芳図譜にダイレクトな影響を与えていたことを確信。
日本には日本の写生の伝統が有り、そこから生まれた工芸があり、それらはジャポニスムを通じてアールヌーヴォーの表現ともクロスするわけだが、それはそれとして上記のフランス式図案教示法は、1900年前後の美術家達に、新鮮なインパクトを与えたと思われる。