国立西洋美術館開館50周年記念事業「かたちは、うつる―国立西洋美術館所蔵版画展」 国立西洋美術館

2009年7月7日(火)〜8月16日(日)

2つの点で興味深かった。
ひとつは、コンセプト設定が、日本語の同音多義的性格に発したイメージの連鎖を利用していること。
「うつる」移る、写る、映る、、「うつ」空、、、など。
でもこれって、磯崎新が1978年に「間」展で打ち出したコンセプト設定を思い出す。磯崎はこれら日本の和語をキーワードに、古い文化と現代芸術家の作品でもって当時パリ、ストックホルムに衝撃を与えた。2000年には「間―20年後の帰還」展として藝大で開催された展覧会で、これらのコンセプトが同じく提示されていた。
こうした言葉の運用を割とストレートにルネサンス以降二〇世紀前半までの版画作品の腑分け道具に採用している。ように見受けられました。

ともあれ、こうしたタイプのテーマ展は、西洋美術館の展示ではあまり見ないようにも思われるので、なんというか、珍しかった。
しかし、所蔵品展としてこの展覧会を眺めた時、所蔵する作品群に何らか新鮮かつ破綻のない秩序をつけて提示するために道具立てが必要、と企画者が感じた(?)のも理解できる。その道具立てが和語の運用だったので、磯崎新の援用ではないかと感じたとはいえ、新鮮味を覚えたことでした。


もうひとつの興味は、やっぱりいい作品を所蔵しているなーということでした。章立てがどうであれ、結局は並んでいる作品が物を言っている感もありました。
摺りの比較は私には出来ませんけれど、メランコリア?、アダムとイヴ、といったデューラーの超有名どころから、マティスの自画像まで幅広い。「ダンス」という章立てがあったのも気に入りましたけど、「舞踏」という翻訳はいかがなものかと思った。

舞踊と舞踏の違いについては、昔サントリー美術館でやった「踊る姿、舞う形−舞踊図の系譜」展の序文が説得力があった。現代に関していえば、舞踏という言葉は土方に発する例の白塗り系以外には使わないのではないかと思う。


コレクション展といえば、藝大の「コレクションの誕生、成長、変容」。書くと書きつつ展覧会も今週で終わる、、。