Le Futurisme à Paris - Une avant-garde explosive

Centre Pompidou
15 octobre 2008 - 26 janvier 2009

タイトル通り、パリにおける未来派をテーマとしたポンピドーセンターでの展覧会。

主旨は非常に明確で、未来派たちがいかにキュビスムに刺激を受けたか、またそうしたアヴァンギャルドを生み出すパリという都市を意識して、メンバーたちが、「第1回未来派展」の立ち上げ会場(その後各国巡回)をパリで行なうことに非常にこだわったということが、まず示される。この前半で圧巻なのが、この第1回未来派展の作品を一室に集めてみせたことだ(残念ながら出品の叶わなかった作品も可能な限り参考写真パネルでフォローしている)。
その後、キュビストたちが今度は未来派を意識し始め、、、という風に、両者の相互影響関係を分かり易く示し、中盤の見所は、セクション・ドールに出品された作品を集めている点。ここでは、セクション・ドールが、キュビスムの記念碑的展覧会であるというよりは、キュビスムが、今度はいかに未来派を吸収したのか、という視点で捉えられている。
このコーナーでマルセル・デュシャンの《階段を降りる裸体》が展示され、隣にジャック・ヴィヨンの作品が並べられている。例の、マルセル・デュシャンの冴えない感じの、チェスをする人を描いた油彩画も一緒に展示されていて、知人の、「天才的な兄さんたちとの差異化を図るためにその後作品をつくったかわいそうな弟マルセル」説が如何にも説得力をもって思い出された。
マルセル・デュシャンは頭だけで描いてるなーという感じが、隣の兄さんの作品(《若い女》)によって印象付けられたことでした。なおちなみに、デュシャンの《階段を降りる裸体》は、ボザールの展示コーナーでやっていた「身体のイメージ」展でも参照されていた。つまり、マイブリッジの連続写真は当然美術学校の参考教材にも使用された訳だが、そこのひとつ階段を降りる裸体を撮った写真と、デュシャンの作品は、ほぼ同じである。
その他、『キュビスムについて』で一世を風靡したグレーズとメッツァンジェの作品もこのコーナーだけでなく割と沢山出ていたが、特にグレーズは、本人の文章はいい人そうだが、作品は平凡な感じ。
あとは、ロシアやロンドンにおける未来派的作品傾向を持つ作家の紹介等。ロンドンの未来派とは、あまり考えたこともなかった。しかし企画者たちにしてみれば、日本の未来派など、さらに検討する意図もなかっただろう、当然1点も出ていない。
しかしながら、ドイツにおける展開に全く言及がなかったのはなんだか不思議だった。キュビスム未来派表現主義、という風になってややこしくなるからですかね。
確かにややこしい。そうした点に立ち入らず、とにかくパリを主に据えたところがこの展覧会のいいところだと思った。
逆に他の整理がし易くなる。

なお、ポンピドーのHPには、この展覧会の見所をキュレーターが語るミニ番組がアップされている。この手の、展覧会会場と作品見所とキュレーターの語りによって普及と広報を同時にやる作戦は、最近フランスの他の展示のHPでも見た。自信に満ちて学芸員がコンセプトを話すのが印象的。また、その制作をほぼ自前でやっているところが素晴らしい。
ポンピドーのは、CNDP(国立教育ドキュメンテーションセンター)との共同制作による。今後もカルダーやカンディンスキー展などで続けるとか。