古代ギリシアの同性愛 新版 K.J.ドーヴァー、中務哲郎、下田立行訳 青土社

古代ギリシアの同性愛


年末から懸案の宿題の合間、逃避行動時に読んでいた本。
古代ギリシア主に古典期のアテネにおける同性愛の研究。
誰も見てこられないし一次資料も限られた古代について何事かを語るなら納得いく方法論をまず説明しておくべきという考えの元に最初に方法論について長く紙面を割いている。
壷絵や今に伝わる文献や岩やなにかに残された落書きまで多数の資料から、「同性愛に関する建前の言説」を精査し、次にその行間から読み取れるであろう本音的なものの検証に入るそのやり方がすごい。主題とは関係ないが、筆者の「推論の垢にまみれた」というもの言いから察せられるスタンスに感動した。

別に同性愛に限らず古代ギリシアに関する知識が一挙に増える本でした。筆者は膨大な壷絵を見ている。残念ながら邦訳本に掲載されている画像はごく一部。それでも数十件の写真だ。
表紙カバーになっているのは有名なルーヴル所蔵の壷絵だけれど、これも含め所蔵先のデータはなし。