生誕百年 靉光展 東京国立近代美術館

3月30日(金)〜5月27日(日)
靉光については自画像とか眼のある風景とか、有名な作品以外よく知らなかったので昨日ちょっと見てみようと気軽に出かけたら良かった。
まず、初期から晩年までの作品を編年順にならべ、ゆるやかにテーマを設定しながらゆったりと見せていた。作品が少ないのは、短い生涯ということもあるだろうが、厳選されている感じもあった。作品そのものをじっくり見せたいということが良く伝わる展示でとても好感が持てた。
一時期描いていたロウ画というものを初めて見た。ロウ、クレヨンや絵具など、画材の使い方にとてもこだわっていて完成度が高い。これが後の油彩画のマチエールにつながるという説明に納得した。これまで上記有名作しか知らなかったので、この人もまたゴッホやルオーなど様々な画風に影響を受け、大正昭和初期独特のなんともいえずモダンな作品を作っていたと知って面白かった。一時期池袋モンパルナスに集っていたことも知った。独立美術協会に出品していたことや、その後福沢一郎の美術文化協会で一緒にやっていたこと、戦中、松本竣介らと会を作っていた事も、なるほどなあ、というか、あまりに孤高の画家のイメージを持っていたので、なんだか妙に腑に落ちた。
展示は、淡々と作品を見せるようでいて実は企画者の思い入れが深い。
最後のコーナーに、出征前の義父に宛てた手紙には、出兵がいやだとは一言も書いていないが、残された家族を案じる言葉、世話になった礼などの端々から、こうして否応無しに運命を受け入れるしかないという諦念の感情が伝わって来て、作品とは関係ないが、やはり戦争はまずい、と思わされた。そうして一番最後の展示物が、戦地の病院で亡くなった後、友人がかたみに持ち帰った飯盒なのであった。
宮城、広島へ巡回予定。