東京芸術大学120周年 パリへ 洋画家たち百年の夢   東京芸術大学大学美術館

misatvska2007-05-17

〜6月10日


パリがいつから洋画家たちの憧れの対象になったかといえば、黒田清輝以降だと思う。それ以前はバイタリティ溢れる画家たちがアメリカやドイツ、イギリスなどへも多く赴いて行った。
黒田清輝以前にも日本に洋画家はいたけれど、日本における洋画の組織インフラを作ったという意味で黒田はもの凄く大きい仕事をした。東京美術学校西洋画科初代教授になり、日本初の官展である文部省美術展覧会の立ち上げに係わり、フランスを手本に洋画家の権威システムを作り上げた。

ということで、黒田のフランスでの師ラファエル・コランからフランスで黒田の画家への方向転換(それまでは法科学生)を進めた山本芳翠以降、黒田はもちろん、黒田ゆかりの初期東京美術学校関係者和田英作、浅井忠、藤島武二などがずらりと並ぶ。
1920年代には(一部にはもっと早いが)、どっと後期印象派以降のフランス現代美術動向が情報として入ってくるので、芸術の都パリへの憧れはいやが上にも高まり、安井、梅原(彼らは1900年パリ万博で油彩画制作に見切りをつけ京都で活躍した浅井忠の弟子たち)を始め、佐伯祐三藤田嗣治、里見勝蔵、前田寛治、小磯良平などなど東京美術学校関係者の名品が続く。ここまでの裏テーマは、実は「日本的油絵」の確立、ではないかと思う。「西洋画」とか「洋画」とか、用語だけみても如何に明治から昭和までの画家たちが日本人としてのアイデンティティを作品に与えようとして苦戦したかが偲ばれるのである。そして最後に戦後から現代までの芸大出身パリ在住作家の作品が並んでいるのも芸大らしい。芸大出身の工藤哲巳の作品あり。今それこそパリで回顧展が開かれているはず。青森県美の人に工藤哲巳展をやらないのですかと質問したら、外国から巡回してくるようなことをおっしゃっていた。現代の中では佐藤利成さんの作品がいい。昔早川さんのギャラリーに出ていたシリーズ。

あるようで2度とない展覧会。解説キャプションがおもしろい。
藤島の《女の横顔》と山本芳翠の《浦島図》《猛虎一声山月高》(←猛虎一声は世間で展示されるのは100年振りではという気がする。)が見られてありがたい。

新潟近美とMOAに巡回。