甘美なる聖母の画家 ペルジーノ展 〜ラファエロが師と仰いだ神のごとき人〜 損保ジャパン東郷青児美術館

misatvska2007-05-03

2007年4月21日(土)〜7月1日(日)

ペルジーノ(ピエトロ・ヴァンヌッチ、1450頃-1523)の展覧会。

ペルジーノが生きた1500年前後は、職人階級であった画家が教養ある芸術家へと地位の向上を求めた過渡期でした。レオナルドやミケランジェロが思索をめぐらす一方で、ペルジーノは定評をえた作風を後半生にシステマティックな制作方法へと展開し、大量の受注を実現しました。そして、まさにそれゆえに、芸術家の精神性を重視する後世には冷遇されたのです。しかし美術界では近年、苦悩する天才というロマンティックな芸術家像をのりこえるように、プロジェクトを進めるリーダーとしての顔を持つ芸術家たちも注目を浴びるようになりました。期を同じくして巨匠達の陰となっていたルネサンスの辣腕画家にもふたたび光があたり始めています。
本展は、2004年に故郷ペルージャで開催されたペルジーノの大回顧展をもとに、ウンブリア国立絵画館に残る貴重な板絵を中心とするペルジーノの作品約40点を借りうけ、再調査が始まったばかりの画家の仕事ぶりをまとめてご紹介する国内初の展覧会です。

上記の観点からペルジーノ展を企画するというのが面白かった。なぜペルジーノ?と思ったけどなるほどと納得した。
地元で開催されたものと比較すればかなり縮小版であろうとはいえ、日本国内でルネサンス期の板絵を見る事が出来るなんて嘘みたいな気がする。ボンフィーリやカポラーリといった、ペルジーノ以前のペルージャ画家の作例なども合わせて紹介されていた。

会場は空いていて、ものすごく間近で見る事が出来た。テンペラの長めのハッチングが特徴的。中庸の美に徹した感のある宗教画と比較すると、肖像画には魅力があり、そこにペルジーノのスタンスを感じた。もっと沢山ペルジーノの肖像画作品を見たくなった。それから代表作も。会場に出品されていた実在人物の肖像画は《少年の肖像》(1494頃、ウフィッツィ)。

ラファエロとの関係性を特に強調した展示で、一番最後には、ラファエロが一時ペルジーノの工房にいたという文脈から、ラファエロの《キリストの埋葬》(ボルゲーゼ美術館蔵)の「模写」が展示してあった。ボルゲーゼが奪った代わりに模写させて地元に残したそうです。模写した人はカヴァリエーレ・ダルピーノ(Cavaliere d'Arpino)。すっかりバロックっぽい作品となっていた。

再生産体制に基づく作品が歴史の中で冷遇され、天才型巨匠作品の陰になっていった、と、いうほど知名度のない作家ではないと思うが、ともあれ、宮廷画家への誘いを断り、大工房の親方画家に徹したペルジーノの作品を日本で見られる珍しい機会。