森鴎外訳オペラ「オルフエウス」全3幕:グルック作曲 東京芸術大学演奏芸術センター(東京芸術大学奏楽堂)

9月17日、18日

これが2400円はお買い得。パンフレットも充実。会場立ち見、終わりにサプライズ有り。

グルック作曲《オルフェウスとエウリディーチェ》そのものは、明治36年東京音楽学校で学生の自主公演として奏楽堂で上演された。日本人による初のオペラとされる。
一方大正3年、森鴎外は脚本《オルフェウス》の第2訳稿を雑誌「我等」に掲載。元々は大正3年7月がグルックの生誕200年にあたるため、国民歌劇会が上演を計画し、鴎外に訳出を依嘱したものだそうだ。訳出は大幅に遅れ、今年、鴎外訳版《オルフエウス》が初上演の運びとなった次第。


文語は美しい、というのが第一感想。
いやだ、いやだ、は「否(いな)、否(いな)」。
妻を呼ぶ時は、女(おみな)、汝(な)。夫は「さい」、また「背(せ)」。愚か者は「痴(おぞ)の者」。
オペラを聴いていて意味が分かるって素晴らしい。しかも格調高く練られた日本語が音楽に良く合い、贅沢な気持ちに。歌を聴いていて目頭が熱くなったのも言葉が分かったおかげか?

それにしても、オルフェウスはなぜ後ろを振り返ったか。
エウリディーチェが愛を確かめたくてこっちを見ろとものすごく駄々をこねたのである。少なくとも18世紀のグルックはそのような話を採用した。最後には神の慈悲により二人を添わせてめでたしめでたしとしている。つまり愛が死を超越するという話になっている。これってどうなんだろう。オウィディウスの変身物語あたりとどう変わってるのか興味を持ちました。
いざなぎといざなみなんて悲惨なものだ。彼らに与えられた物語は、死を直視することでお互いに棲み分けし、死者と生者の区別がつくという話だったように思うが。