池田真哉/天体の写実

明治27年に制作されて明治天皇に献上された《青年画帖》に収められた第3帖収録の〈日月図〉は当時日本青年絵画協会に参加していた、かの柴田是真の次男池田真哉が描いたもの。明治天皇の銀婚式記念ーこれは帝室初めての公式な西洋的「結婚記念」行事で、これ自体時代の息吹を感じさせる事業ーに寄せたこの日月図の驚くべき点は、なんと太陽と月とを、その表面、つまり黒点とクレーターとで表現しているところである。「である!!」と書きたい。
この作品を起点に明治期の美術と自然科学に関する論考をものした大熊敏之氏には感嘆してしまう。私は先日、和田英作が大正も半ばになってボタニカル・アート本を制作していたことを発見し独り悦にいっていたが、その時引用した三好学なんかも大熊氏はちゃんと有機的に論に組み入れておられて、私が紙面足りずに割愛した高島北海などへも言及し、なにより塩田力蔵の美術理論家としての自然観を軸に明治期近代日本画の一面を鮮やかに切り開いているところはさすがだなーと思わずにはいられなかった。