没後400年 特別展「長谷川等伯」 東京国立博物館平成館

2010年2月23日(火)〜2010年3月22日(月・休)

夕方いったら20分待ちで済みましたわ。会場は人の頭ばかり見えました。仕方がないので最初の絵仏師時代の作品をほぼ飛ばし、京都時代以降のみ、なんとか見る。

国宝「松に秋草図屏風」(京都・智積院蔵)、国宝「楓図壁貼付」が恐ろしくよかった。繰り返すが人の頭ばかり見えるので、一歩引いて良く見えるものばかりが目についたのかと思えばそうでもない。「楓図壁貼付」などは、楓の葉の一枚一枚、あじさいらしき花など、細部にも楽しさが宿っているのであった。
猫好きとしては「禅宗祖師図襖」ははずせないでしょうな。首元をつままれた猫の姿が、これまで見てきた歴代猫図の堂々1位に輝きそうな見事さである。あれは、スナップ写真的に、ひょいとつまんで、体がぶらっと揺れた瞬間を心に浮かべて描いたに違いない。それから、猫のあの顔!祖師の顔もイイ。


「松林図屏風」(東京国立博物館蔵)と「月夜松林図屏風」の比較が興味深かった。月夜〜を見たあとだと、松林図が輝くように白く見えて、なるほど雪、と気付かされる。最初、「松林図屏風」のほうの照度を上げているのかと疑ったほどだ。

東京芸術大学大学美術館で「間―20年目の帰還」展という展覧会があったが、磯崎新は展示室にこの松林図屏風を借りてきて展示したかった。さすがにそれは出来ないので複製が展示されたのであったが、その時、この作品の実際の寸法が意外に小さいことに気付かされた。描き出されている空間が広いのである。
ちょっと離れて見た方が見やすい。近くによると、筆致であるとか、墨の物理的な存在感などが迫ってくるが、離れてみるとそれらはやっと空間になる感じ。なにも等伯ばかりではなかろうが、今回そんなことを思った。