医学と芸術展:生命(いのち)と愛の未来を探る     森美術館

2009年11月28日(土)〜2010年2月28日(日)

主催: 森美術館、ウエルカム財団、読売新聞東京本社
後援: 厚生労働省文化庁独立行政法人理化学研究所、社団法人日本外科学会、
社団法人日本内科学会、日本医師会、ブリティッシュ・カウンシル
協賛: DIAMアセットマネジメント株式会社、トヨタ自動車株式会社、
プルデンシャル生命保険株式会社、ジブラルタ生命保険株式会社、
プルデンシャル ファイナンシャル ジャパン生命保険株式会社、
大塚ホールディングス株式会社、オリンパス株式会社、
ジョンソン・エンド・ジョンソン ジャパン・グループ、中外製薬株式会社、
学校法人帝京大学テルモ株式会社
助成: アメリカ合衆国大使館、オーストリア・カウンシル、社団法人東京倶楽部
協力: 日本航空シャンパーニュ ニコラ・フィアットボンベイ・サファイア
企画協力: サイエンスミュージアム、財団法人国際文化交流推進協会

人間の身体は我々にとって、もっとも身近でまたもっとも未知の世界です。人間は太古の時代からその身体のメカニズムを探求し、死を克服するためのさまざまな医療技術を開発してきました。また一方で、みずからの姿を、理想の美を表現する場の一つと位置づけ、美しい身体を描くことを続けてきました。より正確な人間表現のために自ら解剖を行ったレオナルド・ダ・ヴィンチは科学と芸術の統合を体現する業績を残した象徴的なクリエーターと言えます。
本展は、「科学(医学)と芸術が出会う場所としての身体」をテーマに、医学・薬学の研究に対し世界最大の助成を行っているウエルカム財団(英国)の協力を得て、そのコレクションから借用する約150点の貴重な医学資料や美術作品に約30 点の現代美術や日本の古美術作品を加えて、医学と芸術、科学と美を総合的なヴィジョンの中で捉え、人間の生と死の意味をもう一度問い直そうというユニークな試みです。また、英国ロイヤルコレクション(エリザベス女王陛下所蔵)のダ・ヴィンチ作解剖図3点も公開します。

ネタばれという機能は意外に作品の善し悪しを選別するのだろうか。
(以下いわゆるネタばれ?)

全く先入観なしに見にいったので、あまりの死体の多さにショックを受けた。実物として、断片として、また、表象として、写真として。
とりわけ、「生前」と「死後」のポートレイトをセットにしたヴァルター・シェルスの写真に引きつけられずにはいられなかった。撮影の対象となったのは、死後にポートレートが撮られることを承知して、「生前」にポートレートの被写体となった、死期を知った人たちである。作者の主旨等はどうでもよく、死後に撮られる自らの写真に思いを馳せながらこちらを見つめる、「生きてる時の」人の写真。

それから、闘病する自らを、西洋美術における一大モティーフ、ヴァニタスのアレゴリー画のひとつに組み込んだ磯江毅の作品が、不思議な強度を持っていた。

人が死期を自覚したときのポテンシャルはすごい。
私も含め、みんなそうだと思うのだが。

その他、身体を補完するものとしての義足、義手。内覧日だったからか、蜷川実花デザインの義足みたいな義足をした可愛い女の子がいたので思わず見つめてしまった。後で図録をみたら蜷川作品のモデルとして写真が掲載されていた。
その他、身体的な奇形、あるいはクローン技術を背景にした人間をシミュレーションした現代作品。

こうした中にレンブラントダ・ヴィンチの作品を挿入するのは、その知名度が邪魔して浮いていた感じがした。
いろいろな意味でごった煮的かつ徹底的ではない展覧会だったが、ダーウィン使用の杖やナイチンゲール旧蔵の刺繍入りモカシン靴に心躍らせ、骨を切るためのフランス製のこぎりに腰を抜かし、ハースト作とされている、手術室内の光景をハイパーリアルに描写した油彩画を前に、本人描いたのかしらと疑惑を抱くなど、友人と私は割と多くの楽しみをこの展覧会に見出した。