ビル・ヴィオラ: はつゆめ 森美術館

06年10月14日-07年1月8日

気忙しくて備忘録を忘れがちなこの頃。

学生の頃から、刷り込みのように「かっこいい」と思っていたビル・ヴィオラ。その個展を手がけるとはさすがエ氏と思い楽しみにしていた。

出品作品は、比較的近年のものが中心。90年代以降。古いものを見たければ、ICCに行けば見られる。
ヴィオラは、ビデオを用いて、割とオーソドックスな技法を使いながらビデオ映像というメディアでしか実現不可能な表現をする。その点では昔も今も一貫している。プロの芸術家という感じがする。極端なスローモーションや停止、再生、巻き戻しなどの時間の操作によって、人の感じる「時間」というものを実に巧みに表現すると思う。引き延ばされた時間の後に突如訪れる一瞬(作品によってはその「一瞬」はなかったりする)が時として大音響と共に訪れるので、私には怖く感じられて、随分長いこと、ヴィオラの作品を見るときには緊張していた。
ところで今回の個展では、《ミレニアムの5天使》という5面のインスタレーションが映像として素晴らしかったのだが、なぜか感動に打ちのめされるというようなことがなかった。なぜだか考える必要があるかも。

クロッシング》1996年、もインスタレーションがすごくスマート(金も掛かっている)で迫力があって、いいはずなんだけれど良くなかった。解説を読まされているようで、理に落ちたという感じ。

ああ、今回の展覧会、期待以下だった。期待が大きすぎたからいけなかったのかしら。それとも展示が立派すぎてコスト計算に意識がいってしまったからか。作品入り口のキャプションの作品解説をつい読んでしまったからか?あの解説は、技法解説はいいけれど、テーマというものを人に強要しすぎているように感じられて私にはいただけなかった。
なお、「はつゆめ」という作品は展覧会タイトルになっているにもかかわらず現在会場では見られない。聞いたら尺が1時間なので人の滞留を避けたということだった。ICCで他の作品と共に特集上映している。但し上映日はあと2回。