京都2

京都から帰ってきた。
今回生まれて初めて京都ならではの家屋に上がる機会を得た。つまり格子戸をくぐると細い石畳が続いていて奥まったところに屋敷がある。というもの。嬉しい。玄関を入り1畳ほどの前の間があってふすまの向こうの8畳ほどの座敷に通される。床の間に吉川霊華っぽい軸と生花。上座に座布団と灰皿とマッチが用意されていて、下座に少し小さめの座布団。私は謙虚に迷った。どっちに座ればいいか一応聞いてしまった。それから主人を待つこと半時程。時間は約束してあったが、まあいいでしょう。
何しろキトラ古墳壁画がえらいことになっているようだし。主人の遅刻と関係あるかはよく分からないが。今壁画の現場担当者諸氏と文化庁の担当者は気が狂いそうな日々を送っていることと思う。無くなってしまっては隔離保存していた意味がないですからね。ボードリヤールが引いたフランスの壁画(ラスコー?)についてのエピソード、完全隔離された「本物」の壁画のそばに精巧なレプリカを作り、人々はそれを見て満足するというエピソードを思い出す。あれは、本物が「現存する」という安心感が担保にあって成立することだったのだなと今更気付きしみじみ。
今回あまり美術館には行かなかった。代わりに寺町通り裏の同時代ギャラリーですごくいい個展に出会い興奮。あやうく売買交渉しかけたが自分の財力について自分をごまかせず口に出すのを断念。
かわりに近くの店で帽子を買った。ソウルフルなBGMが掛かる若向け帽子屋の中に品の良いおばあさんがひとり。孫娘がデザインして、いわれた通りにおばあさんが縫って売っているのだそうだ。