折鶴お千 溝口健二監督 1935年

山田五十鈴は魅力ある女優さんである。山田五十鈴のきりりとした美しさに酔いたい。
ということでビデオ(アポロン活動大写真:活弁トーキー版:弁士澤登翠)を借りてきた。

泉鏡花「売色鴨南蛮」原作。
高島達之助脚色。
製作=第一映画社 
配給=松竹キネマ。
衣装調達=松坂屋
選曲=松井翠聲

お千=山田五十鈴
宗吉=夏目大二郎
映画中の明治の風俗が鏑木清方描く世界を彷彿とさせていた。
溝口監督最後のサイレント作品。とはいえ音楽は入っている。東京神田近辺を舞台とした物語。
原作では鏡花らしく淡々と語ったり行間で示したりする部分が、映画ではかなりのウェイトを割いて具体的描写されている。鏡花中心に考えるといらない部分だが、山田五十鈴が出るので良しとする。
泉鏡花のつくる物語は魅力的なので、たくさん映画化されているが、もう一つの魅力、文章の韻とか、語呂など言葉から来る呪文にも似た雰囲気は、映画ではなかなか出ないのでは。となると、この映画のように弁士付き、という昔の作りは凄く有効なのかもしれない。字幕によって文字がばんと出たりするし。
フラッシュバックが心理描写に多様されているのが新鮮。映画の多くの部分は医学博士宗吉の回想なので、宗吉の心に残るイメージであるとか、精神異常になってしまったお千にとっての現実など。山田五十鈴の狂ったお千の表現がすごい。